●● Wonderful Every Day --- ファンクラブってオイ ●●
「…で、What's this?」
とりあえず目の前の大きな机の上に置かれている分厚いファイルを指さして言う。
ちなみに、英語は気分だ。
「見てわからない?この学園の美少女生徒プロフィールファイルよ!名付けて『山内学園美少女ファイル』!!とりあえず見てみなさい!」
あいかわらずな亜耶姉のネームセンスに呆れながらも、何ページか適当に開きざっと目を通してみる。
どの子も負けず劣らずな美少女ばかりで写真の横にはプロフィール……ケー番からメアドまで書かれていた!
あなたの青春を後押ししてくれる強力な助っ人『山内学園美少女ファイル』!
ついつい照れちゃうそこの君も!
強い思いを胸に秘めた君も!
これさえあればクラスの気になるあの子と、
いつでもどこでも連絡取りほうだ〜い!
数も豊富で質も高い!2年間の保障付きで大きな安心!
さてさて、学園中の男子諸君大注目のお値段は、なっな、なんと19800円!!
それだけじゃないんです!
今回は、限定特典としまして学園長のストラップがついて値段はかわらず19800円!19800円!
さぁ!君も高校生活ENJOYしよう!
「尚史ちゃ〜ん?お〜〜い?大丈夫ですかぁ〜?」
おっと、イカンイカン。
今のテレビショッピングといい、この部屋に飛び込んできたときの隊長といい…最近疲れが溜まってるっぽいな。
そんなことを思いながらまたファイルに視線を落とすとふと気になるものを見つけた。
「未来さん、この☆ってなんですか?」
ちょうどページの右側に大きな☆のマークが描いてある。
それはさながら国語辞典のようにすべてのページに書かれていて後のページになっていく程に☆の数が多くなっていくらしかった。
最初はページ数を表しているのかとも思ったが、どうもそうではないらしい。
「よくぞ気がついたわ!!今日尚史を呼んだ理由はまさにそれに関係しているのよぉ!!」
…おれは未来さんに聞いたんだけどなぁ。亜耶姉よ。
ってか、なんでそんなにハイなんだ。変な薬でも始めたのか?
それとも父親の血をしっかり受け継いでいるのか?
そんな亜耶姉を特に気にするでもなく未来さんがファイルに軽く指を置いて説明しはじめる。
「このファイルを見てもわかることなんだけど、この学校って可愛い子がたくさんいるの!私とか亜耶ちゃんみたいにね!さて、こんな美少女がたっくさんいて漢たちが黙っているはずない!そうよね尚史ちゃん!」
…なんでこの人はこんなに自分に自信があるんだろう。
隣で「よく言ったわ!」とでも言わんばかりにガッツポーズをする亜耶姉もだけど。
…とりあえず何されるか知ったこっちゃないから頷いておくけどさ。
「そんな熱き漢たちは多くの美少女の中から「これはっ!」と思う子を見つけると早速!」
そこで口を閉じ、期待のまなざしでこちらを見つめる。
「え〜と、『アタック』ですか?」
そう言った瞬間に、未来さんの顔が少し曇ったのを見て「熱き漢だし…」と自分なりに考えたということをアピール。
「考え方としては悪くないんだけどなぁ…熱き漢はイキナリ想いを告げないってのはこの世の常ってもんだよ尚史ちゃん」
「正解は『好みの合う漢たちを集めてファンクラブを結成する』でした。やっぱり尚史はアホね」
そんな常識あって堪りやがりますかコノヤローが。
…やっぱり、この学校の常識は非常識だ。
ってか、いつからクイズになったんだよ亜耶姉。
「さて、ファンクラブを作った彼らはお互いにその子の情報交換をしたり、事あるごとにその子を支援したり、妄想めぐらせたり、他のファンクラブと衝突して抗争して重軽傷者だしたりして高校生活をENJOYしていくの」
…うぁ、なんか急に説明がアバウトになった気がする。
ってか、活動内容におかしいのが2つばかりあったような気がするけど俺の気のせいか?
「で、私や亜耶ちゃんみたく大きいファンクラブを持ってる子もいれば、当然ファンクラブのない子もいるの。それをわかりやすくしたのがこの☆マーク。ちなみにレベルが高い子ほど☆の数が多くて最高で10個よ。大体の子がせいぜい7まででファンの数も少なめなんだけど…」
「さぁ!そこで問題なのがここよっ!」
前もって役割分担でもしておいたかのごとく亜耶姉がファイルのページをバサッと開く。
ページに描かれた☆の数は9つ。で、そのページに並ぶ女子生徒なんだが、
「……あれ?これって」
「うん。このあたり」
フフッと軽く笑いながら未来さんが何人か女子生徒を指差す。
「見覚えある子ばっかりじゃない?」
ニヤリと亜耶姉。
「いや、知ってるも何も…」
川島 恵美
谷村 春菜
宮嵜 瀬里奈
「全員、俺と同じ寮…ってか、3人とも☆が9!?」
「驚いた?」
うれしそうに笑う未来さんに素直に頷いてしまう。
確かに、みんなきれいだったり可愛かったりしたけど…ここまでとはなぁ…。
「で、さっきのファンクラブの漢たちの話を思いだしてほしいんだけど…突然自分たちのあこがれの星の元に知らない男が来てしかも同棲してるなんてことになったらどうなると思う?」
「う〜ん、嫌がらせ?シューズ隠されるとか…」
「甘いっ!!」
「うっ、なにもそんな叫ばなくても…」
「尚史ちゃんの命の問題なんだよ!」
「なんですとぉ!!!??」
それは、本日何度目かの俺の叫び声が校内に響いた瞬間だった。
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