●● Wonderful Every Day --- 巫女さん? ●●
――――ザッ――ッズザバ――
顔を上げるとそこには…
「君たち、こんなとこで何やってるのよ!」
「え?」「ふぇ?」
朱色のはかまを穿はいた巫女さん?がいた。長い髪を後でひとつにしている。
瀬里奈みたく、『大人』な顔立ちだが、目つきが鋭いのは怒っているのか?
「あ、恵美!」
「ん、梓?」
どうやら、恵美の知り合いらしい。
とにかく熊じゃなくて良かった。
「恵美!そこ、どきなさい!」
そういうなりどこから持ち出したか木刀を明らかに俺に向けて構える。
「私の恵美を寝取ろうとした変質者め!」
「え?えぇ〜!」
いきなり変質者にするなよ!
しかも、今『私の』ってとこ強調されたけど何で?
「覚悟!」
なんで〜!?この人、熊より怖えぇよ!
っていうか神に仕える聖なる巫女さんがそんなに暴力的でいいのかよ!
ツッコミしながらも振り下ろされた木刀にはなすすべも無くそのまま目をつぶる。
――――ガッシ!
「「あれ?」」
今に走るだろう激痛を思って身構えていたのだが何も起こらない。
目を開けてみると恵美が片手で巫女さんの木刀を止めていた。
っていうかよく片手で止められたな。
止められた巫女さんも驚いているみたいだ。
まったく、今日の買い物のときといい、こいつのどこにこんな力があるんだよ。
「梓ぁ〜。ダ・メ・だ・よ♪」
喋り口調は普段とかわらない…それなのに、目がまったく笑っていない。
それなのに顔は笑っている。怖い!
もの凄く怖い!
ってかメチャ怖いっ!!
「ご、ごめんなさい!」
ほら、巫女さんも俺と同じ心境らしいぞ?
「そ、それより恵美はこんなとこで何やってるんだ?」
「え〜と、こっちの尚ちゃんに町案内してたら迷っちゃったんだ」
と、そのまま勝手に俺の紹介。
さっきまでの迫力はどこへやら、もう元の恵美に戻っていた。
「へぇ〜、山内学園の生徒か。私の名前は西守 梓。渦原高校の一年で、この近くの神社の巫女をやってる。なんか林の中から人の声がするなと思って来たんだが…さっきはスマン。お詫びといっちゃ何だが道、わかるとこまで送っていこうか?」
「お、助かる!」「ありがと♪」
「それでは」
そういうと慣れたようにスタスタと進んでいく。
「ここならわかるんじゃないか?」
しばらく歩くと巫女さんが止まる。
「あ、うん、わかるわかる。梓ちゃんありがとね〜♪」「ホント、サンキュな」
「いや、元々私の間違いが悪いんだ。ちなみにここが我が家…っていうか私が巫女やってる神社だ」
「うんうん、それにしてもいつ来ても大きいよねぇ〜」
「当たり前だ。なんていったってこの世界を治めるというお方を祭っているのだからな」
「うぁ、そりゃまたスケールのでかい」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「「ただいま〜!」」
「お!二人ともおかえり。ちょうどご飯できたところだ!」
そう言って向かえてくれたのはみるからに『仕事をやり終えたぜ!』って顔をした晄だった。
どうやら予定どうり新しい『情報』を手にいれられたみたいだな。
リビングに行ってみるとハルちゃんが寝ぼけた顔で座っていた。
「あ、ハルちゃん起きたんだ〜!」
「どうもです。恵美先輩と尚ちゃん♪」
今、ハルちゃんが『尚ちゃん』って言った?…っう、なんか嫌な予感がする。
「尚ちゃ〜〜〜ん♪」
「ヒィイ!!」
なんか危ない目したハルちゃんが近づいてくるんですけどぉ!
「はいはい、ハルちゃんもそこまで、ご飯ですよ」
そう言って瀬里奈はハルちゃんをもとの椅子に座らせる。
セーフ!
それにしても、ナイスタイミングだぜ瀬里奈!
なんかアレだな。子供をたしなめる母親みたいな。
「ん?尚史君何か言った?」
「な、なんでもないぞぉ〜。さぁ!ご飯だご飯だ!」
瀬里奈さん…勘が冴えすぎでございますよ?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ふ〜、明日から学校かぁ。
みんなと違って知ってる人少ないからなぁ〜。
先生も校長しか知らないし…ある意味すごいか?
勉強難しいかな?友達できるかな?学校どんなのかな?
ま、考えてもしかたないな。
とにかく楽しもう!精一杯楽しんで高校生活を満喫するんだ!
じゃ、寝ようかな。
「楽しく過ごせますように!…おやすみなさい」
「おやすみなさいですぅ〜」
?…何か聞こえた気がしたけど…ま、いっか。
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