●● Wonderful Every Day --- 来ちゃいましたよベイベー!!! ●●
帰るとみんな特に何をするでも無くリビングに集まっていた。
まだ晄は情報収集らしく部屋にも行ってノックしてみたがまだ帰っていなかった。
「暇ですね〜」
瀬里奈が小さいあくびを抑えながら呟く。
おそらくこの場にいる全員が瀬里奈と同意見。
潮風寮の外で近所の子供達が遊んでいるんだろう。にぎやかな声が少し遠くで聞こえてきた。
気温、湿度共にバッチリだしこのまま寝ようかなぁ。
…む、目の前に気持ち良さげに寝息たててるハルちゃんはっけ〜ん。
「っよし!」
俺がうとうとしかけていると、
今まで机に突っ伏していた恵美が起き上がる。
その勢いと声でみんな(といってもハルちゃんは寝てるが)一斉に注目する。
「尚ちゃんって昨日この町に来たばっかりでこの町のことあんまり知らないでしょ〜?」
「ん?ああ」
「っというわけで、これから尚ちゃんの町案内しま〜す!」
「俺、ねみい…」
「ねえ、セリちゃんはどう思う?」
「じゃあ、二人が帰ってくるまでにご飯作っとくね」
恵美の提案に笑顔で進めようとする瀬里奈。
っていうか俺の意見は?俺寝たいんだけど?
「そうと決まったら尚ちゃん、シャキッとしなさ〜い」
「…っ!!」
いつの間にか俺の後ろに回ってた恵美に渇いれられた。
ってかマジで痛い。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
恵美にあちこち連れまわされたあげく俺らは現在小さな雑木林にいる。
周りにはどれも大きな木ばかりが生えていてそりゃ、もうマイナスイオンたっぷり満喫中なわけだが、
「え〜っと、ここどこ?」
「…さあ?」
『さあ?』ってあんたが「こっちだ〜」って連れてきたんでしょうが!
「携帯持ってないのか?」
ちなみに、俺のは自分の部屋に置いてきてしまった。
「ん〜と、あるよ…ほら!」
そう言って見せてくれた携帯は画面が真っ暗になってまるで鏡のように俺の顔が・・・ったく充電ぐらいしとけよ!
「ま、適当に歩いてればなんとかなるかもよ!」
あくまでプラス思考で行こうとする『Ms.方向音痴』の襟首をつかんで止める。
お前の場合、適当に歩いてっちゃ余計ダメだろうが。
まったく、最初に会ったときは真っ直ぐに潮風寮に連れてってくれたのになぁ。
――――ザッザ――ッザ――
「「何?」」
遠くで何かが動くような音に二人で同時に反応する。
「なあ、この辺、熊とか出ないよな?」
一応恵美に聞いておく。
「……」
返事が無い。ってことは!?
―――――ズザッ――ッザ―
近い!なんで近づいて来んだ馬鹿野郎!
ん?野郎なのか?…ま、いいや。ってことで馬鹿野郎!
「な、尚ちゃん…」
「ひ、ひとまず死んだふりだな」
俺がいうと恵美が涙目になりながらも地面にうつぶせになる。
あ、でもヒグマの場合は逆効果だったっかこれ?
俺もヒグマでないことを願いながらその隣に同じように横になった。
――――ザッ――ッズザバ――
き、来ちゃいましたよベイベー!!!
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