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● Wonderful Every Day --- SHOPPING! ●

少し雲がかった天気のなか長い坂道を登っていく。
コンビニは他にもたくさんあるらしいが、
スーパーはこの上にしかないらしい。

「先輩たち歩くの速いですぅ〜」

「そうだよ〜。尚史君も恵美ちゃんももうちょっとゆっくり行こ?」

後でハルちゃんと瀬里奈が呼んでいる。
ふたりとも体育とか苦手そうだもんな〜。
それに比べて隣にいる恵美はスタスタと涼しい顔で坂をあがっていく。
男の俺でも追いついていくのがやっとだ。
別に体力がないわけじゃないんだけどな〜。

「恵美、ちょっと待ってやれよ〜?」

「う〜ん? ちょっとだけね〜」

そう言うと俺のところまで来てしゃがみこむ。
ちょっとは疲れているみたいだな。
しかし、瀬里奈たちが来たのをたしかめるとまた歩きはじめた。

「恵美ちゃん元気だね〜」

「ですね〜」

「一体あの小さい体のどこにそんだけ力があるのやら…」

それぞれに言いながら後を追う俺たち。
それにしてもホントにこの坂長いな〜。

「なあ、瀬里奈。あとどのくらいだ?」

もう200メートルは歩いただろう道をふりかえりながら言う。

「もう少し、あと50メートルくらいかな?」

…走るのか?
どうしても50メートルと聞くと中学のときのタイム計測を思い出すんだが。

「あ、見えてきましたよ」

今回、一番疲れているであろうハルちゃんが嬉しそうに言う。
その視線を追うと結構大きめのスーパーがあった。

「も〜、遅いよ〜」

中に入ると恵美が入り口付近でジュースを飲みながら待っていた。

「先輩ジュース飲むなんてズルイです〜!」

「じゃあ、春菜ちゃんにもあげようかね?」

どこから出てきたのかいつの間にか恵美の隣にいたおばさんがハルちゃんに恵美が飲んでいるものと
同じものを渡す。どうやら恵美もこの人からもらったみたいだ。
ん?なんかこのおばちゃんどっかで見たことあるような…。

「あっ!あんたは駅の!」

「あ、売店の!」

そうそう、思い出した。亜耶姉とアイス買ってたら急に話し掛けてきたおばちゃんだ。

「尚史君知り合い?」

「いんや、駅であいさつした人」

「おんやまあ! 『また』あんたは女の子連れてるのかい? それも3人!」

「「「 また!? 」」」

3人が一緒に言う…いや、叫ぶ。
何?俺、何かした?

「あの、ただの買い物で来てるだけなんで」

3人に変な勘違いされるのいやだしと付け加える。

「また〜、照れちゃって〜!若いね〜!」

豪快に笑いながらバシバシッと俺の背中を叩く。痛いです。

「じゃあ、恵美ちゃんも春菜ちゃんもまたね〜」

「は〜い」「ごちそう様でしたぁ〜」

おばちゃんが見えなくなると3人で一斉に不吉に笑いながら俺に近づいてくる。
ハッハッハ、お嬢さんたちぃ、ちょいと怖いぜぇ。

「「「尚史君(尚ちゃん、先輩)? 女の子って誰(ですか)?」」」

「い、従姉だよ。い・と・こ」

「「「う〜ん」」」

唸る3人。
…俺って信用ないのな。

「嘘ついても意味ないだろ?」

見事に3人同時にため息をつく。
え?いや、アレなのか?『なんだ従姉なのかぁツマンナ〜イ』ってことか?

「そういえばあのおばさんって知り合いなのか? ハルちゃんと恵美のこと知ってたみたいじゃん」

「あの人は杉浦さんっていって小さき人大好きクラブの会長さん」

「『小さき人大好きクラブ』? なんじゃそりゃ?」

「え〜とね、簡単に言うと恵美ちゃんとハルちゃんのファンクラブかな? この近所の人ならだいたい入ってる」

「ああ〜、納得」

ふたりともカワイイとは思ったけどファンクラブまで持ってるほどとは思わなかったな。
それにしても近所か…なんかまた会う気がする。
とにかく『杉浦さん』を【危険人物2号】に認定っと。
ちなみに記念すべき第1号はハルちゃんだ。おめでとう。

「…尚先輩?」

やべっ、普通にハルちゃんに向かって拍手してたぜ。

「いや、ハルちゃん気にするな」

「これでよしっと。じゃあ、行こうか?」

振り返ると、瀬里奈がカートの中に持ってきたかごを入れて準備万端とばかりに笑っていた。
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