●● Wonderful Every Day --- 潮風寮! ●●
「あ、尚ちゃん見えてきたよ〜。ほら、あそこ!」
しばらくすると恵美が言う。
恵美の指差す方向には清潔感ある白塗りの建物。
「へ〜、結構良さそうな所じゃん!」
「うん!実際良いとこだよ♪」
玄関扉を開けて中に入ると奥の方から足音が聞こえて、小さな女の子が出てきた。
ここに住んでる子かな?今度は間違いなく俺より年下だな。
「お帰りなさいです恵美先輩。あれ? そちらの方は?」
「ただいま〜。えっとね、昨日ミッ君が話してた山内君だよ。道に迷ってたから連れてきてあげたんだ〜。尚ちゃん、この子はこの潮風荘に住んでる高一のハルちゃん」
「そうでしたか。はじめましてです。尚先輩のことは昨日お兄ちゃんから聞きました」
お兄ちゃんから聞いた?あ、恵美の言ってたミッ君ってこの子のお兄さんなのか?
っていうか俺の名前『尚』じゃなくて『尚史』なんだけど…まあ、とりあえず
「これからよろしくね」
「はい、よろしくです♪ あ、ここで話すのもなんですからリビング行きましょう」
ハルちゃん(本名がわかんない)はそう言うとと俺と恵美を近くの部屋に招き入れる。
どうやらリビングらしい。大きい机がひとつ真ん中にあり、10脚の椅子がそれぞれに並んでいる。
「今、お茶入れますから好きなところに座って待っててください」
ハルちゃんはそう言うと隣の部屋へ行ってしまった。
言われたとおりに一番近くにあった椅子に座る。恵美も俺の隣に座った。ってか、何故に横?他にもたくさんあるぞ?
しばらくするとお茶を持ってハルちゃんが戻ってきた。
「どうぞ」
そう言って俺と恵美の前に紅茶を差し出す。
「お、ありがと」「ありがとね〜」
紅茶からは入れたばかりだからかとてもいい香りが漂ってくる。飲んでみると喫茶店で飲む安い紅茶とは違ってとてもおいしい。喫茶店の紅茶ってちょっと甘すぎるんだよなぁ。まあ、俺が知ってる喫茶店がそうだっただけかもしれないけど。
「あの…どうでしょうか?」
少し不安げに俺を見上げるハルちゃん。
「すごくおいしいよ!」
「そうですか?ありがとうございます!」
嬉しそうに笑いながらハルちゃんは俺の向かいの席に座る。
「ねえハルちゃん、尚ちゃんに紹介したいんだけど2人共いる?」
「たしか、お兄ちゃんも瀬里奈先輩も部屋にいたと思います」
どうやらあと2人いるらしい。ということはこの寮には俺も入れると生徒が5人いるってことか。
まあ、この建物にしては多すぎず少なすぎずってとこかな。
「そぉか〜。じゃあ、私はもう自己紹介やったからハルちゃんやってあげたら?その間に2人共呼んでくるから」
「えっと…はい、わかりました」
ハルちゃんが言うと恵美は玄関にいたときに見えた階段を上って行った。個人の部屋は二階にあるらしいな。恵美が行ったのを確かめてハルちゃんが立ち上がる。いや、立つ必要ないのに…。
「え〜と、じゃあ、まず名前から、私の名前は谷村 春菜っていいます。呼び方は好きに呼んでください。ちなみに潮風寮に住むただ1人の中学生であとから紹介があると思いますけど谷村 晄の妹です。好きなものは甘いもので、嫌いなものは苦いものと虫です」
やっぱり晄君(ミツ君は言いずらい)と兄妹なんだ。
「じゃあ、改めてよろしくね」
「はい、よろしくです」
俺とハルちゃん(結局ハルちゃんと呼ぶことにした)があいさつし終わったと同時に階段のほうで音がした。どうやら、恵美があと2人を連れて来たみたいだ。
「おお、待ってたよ新人君!」
そう言ってまず、背の高い眼鏡をかけたそこそこカッコイイ男の子が入ってきた。どうやらこれが晄君らしい。
晄君のあとに続いて来たきれいな顔立ちの女の子がたぶん瀬里奈さん。
「2人とも、先におじゃましてるよ。晄君と瀬里奈さんだよね?」
一応確認。
「そのとうり!」「は、はい!」
そう言うと晄君はハルちゃんの隣の席に、瀬里奈さんは恵美がいるのとは逆の隣の席に座った。
「ねえ、2人共、私もハルちゃんも自己紹介終わらせたんだけど。どっちが次やる?」
恵美が言った。
「え、え〜と晄君。わ、私からでいいかな?」
「そうか、なら俺はあとで」
順番が決まると瀬里奈が俺の方を向く、隣の席にいるから瀬里奈の顔が良く見えた。
恵美とハルちゃんが『かわいい』なら、瀬里奈は『美人』の部類なんだろう。
「わ、私の名前は宮嵜 瀬里奈っていいます。山内高校の一年生です。ちょっとドンくさいかもしれないけど・・・これから長い間一緒に過ごすからよろしくおねがいします」
「え〜と、呼び方はどうしよう?」
「な、名前でお、…お願いします」
「OK、瀬里奈。これからよろしく」
…なんか顔赤いぞ?自己紹介とか苦手なのかもしれないな。
それにしても恵美といい瀬里奈といいなんで呼び捨てがいいんだ?
「じゃあ、次は俺!」
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