●● Wonderful Every Day --- 案内してあげようか? ●●
「わかんね〜!ってかこの道通るの3回目だぞ!?」
そう、俺は完全に道に迷っていた。
亜耶姉に電話して詳しく道聞こうとしたけど電池が切れてて出来なかった。
さっき携帯もらえたのがうれしくて操作しまくったのが失敗だったな。
「こうなったら、人に聞くか〜」
とりあえず近くを通りかかった女の子に聞いてみる。
人見知りしないから相当のことじゃないかぎり人に声を掛けるのは朝飯前。
おっと、朝飯どころか昼食も食ったから「夕飯前だ」のほうがいいのか?
「ちょっといい?」
「え〜?な〜に?」
外見(背の高さとか)と喋り方からして俺より年下だな。
たぶん中学生くらいだろう。
「あのさ、潮風寮ってとこ探してるんだけど知ってる?」
ちなみに、寮の名前はさっき亜耶姉に聞いた。
なんでもこの町にいくつかの寮があってそれぞれに名前がついているらしい。
「潮風寮…あ、潮風荘のことだね〜?そこならわたしが住んでるところだよ。案内してあげようか?」
おお!なんかすっごい偶然だけどラッキー!
そういえば山内学園って小等部から大学まであるんだっけ?
「じゃぁ、頼むよ。でも、何か用事があって歩いてたんじゃないのか?」
「ううん。別にいいよ。どうせ暇で散歩してただけだから」
そう言わてみれば暇そうに歩いてたな。
それにしても、なんていい子なんでしょう。
顔もかわいらしいことですしまさしく天使様なのでしょうね。…うん、俺にこのキャラはあわない。うん
「ねえ、もしかして山内 尚史君?」
「え?ああ、そうだけど。って、なんで俺の名前知ってるんだ?」
ま、まさか一般人の中に紛れ込んだエスパー…は、さすがにありえないか。
それにしても、初対面の年上に向かって君付けとはこの子やりよるな。
「昨日ミッ君が言ってたんだ。あ、ミッ君は後で紹介するね」
女の子が笑いながら言う。
「そういや、まだ君の名前聞いてないよな?」
「ああ、わたしの名前は川島 恵美だよ。ちゃんは付けなくていいから恵美って呼んでね〜」
「じゃ、まあよろしくな」
「うん!よろしくね尚ちゃん!」
ニコニコと笑いながら恵美が言う。それにしても『尚史君』から『尚ちゃん』になるまで早かったな。
まあ、特に悪い気はしない。
これからご近所さんということもあり俺は恵美に引っ越してきたいきさつや自己紹介をしながら歩いた。
どうやら年齢と名前以外はその『ミッ君』とやらから聞いてないらしい。
「それにしても、恵美もその歳で寮暮らしってのは大変だよな」
「むぅ。『その歳で』って尚ちゃんわたしがいくつかわかってる?」
見た目的には中一。
けど女の子って大人っぽく見られたいらしいから…
「中二!」
「もっと上!」
「え〜と…じゃあ、中三?」
「違うよ〜なんで中学生範囲しかないの? 尚ちゃんと同じ高一だよ〜」
「…?」
「むぅ! 尚ちゃんひどいよ〜ホントなんだから〜」
俺がしばらく『?』してるとそう言って恵美は持っていたカバンをあさくりだした。
「チャッチャチャ〜♪ほら、山内学園は学年が上がる前に新しい手帳とかがもらえるからこれでOK♪」
どうやら探していたものは生徒手帳だったらしい。
ってか見つかったのが嬉しいかもしんないけどわざわざ俺の顔に突きつけんな!
「『山内学園高等部一年 川島 恵美』…。マジだったんだな、ごめん」
「尚ちゃんだから許してあげる〜」
…『尚ちゃんだから』ってなんだよ?
まあ、どうやら目の前で笑っている小動物は俺と同じ高一のようだ。そんなことよりも、
「恵美。お前この手帳に何書いてるかわかってて俺に渡したのか?」
「へ? どうして?」
一瞬にして恵美の頭の上に『?』が咲きほこる。
花見したら綺麗かなぁ〜。って俺、意味わかんねぇよ!
「言いにくいんだが…その、体重とか書いてあるぞ?」
「あ〜それね〜別に見てもいいよ〜軽いしね〜」
ちなみに恵美の体重は…ってオイ、軽すぎだろ!
まあ、恵美だし(身長低いし)しょうがないか。ってかもっと恥ずかしがれよ。
普通、女の子って体重とか人に知られたくないんじゃないのか?
「あ、そうだ!なぁんと!次のページに恵美ちゃんのスリーサイズが書いてあるのです!見る?」
「いや、やめとく」
俺は理性を保ち、手帳をそう言って恵美に返す。
うん、よく頑張った俺!感動した!
恵美が不思議そうに俺の顔を見たけど少しするとまた歩きはじめた。
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