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● Wonderful Every Day --- 亜耶姉とアイス ●

「うわ〜頭が『キーン』ってなったよ!『キーン』って!」

「ウッ!俺もだ〜」

最初は亜耶姉が全部食べる予定だったけど途中から俺も食べることになった。
さすがに一人で15個は食べれないらしい。

「じゃ、食べ終わったら尚史の寮行こうか?」

口の端にソフトクリームをつけながら亜耶姉が言う。
ってか、なんでタレントみたくそんなにうまくつけれるんだよ。

「う〜ん、寮には俺ひとりで行くよ」

「どうして?」

「亜耶姉と一緒に行ったら寮の人たちにもさっきのおばちゃんみたいに勘違いされるかもしれんだろうが」

「いいじゃん!私、尚史とだったら付き合っても良いよ〜♪」

そう言ってなんともいえない笑みを浮かべた亜耶姉の顔が近づいてくる。
正直、亜耶姉は綺麗だと思う。たぶんそこらの女優と比べてもひけを取らないだろうと思えるほどに。

「…やめとく」

「なんで?」

「毎日振り回されそうだから」

「おお!尚史にしてはえてるね〜!」

いや『尚史にしては』って失礼だろうが。オイ。
ちなみに、今までも何回か亜耶姉に『付き合え〜』とか言われたことがあるけどいつも今みたいに冗談混じりに終わるから本気じゃないんだと思う。

「あ、そういえば寮がどこにあるのか知らねぇ!」

「じゃあ、優しい亜耶お姉さまが愚かな従弟のために地図を書いてあげよう!」

う〜ん、『愚かな』ってのが引っかかるが…

「お願いします!」

「お願いされます!」

アハッ♪っと笑ってから亜耶姉が紙とペンを持ってきて地図を書き始める。

「あ、尚史に良いこと教えてあげようか?」

「何?」

「尚史って携帯持ってなかったでしょ?」

「うん、中学のときに買ってもらう予定だったけど父さんも母さんも仕事が忙しくて買えなかったんだなぁ〜」

まあ、中学のときは友達とかから借りてたから良かったけどな。
高校生となると携帯くらい持ってたほうが良いか?

「お父さんがね、『尚史君も高校生になったんだから無いとイカンだろ〜』とか言って買ってくれたよ」

「マジ!?」

「うん、ホント。そこの紙袋に入ってるよ?」

「やった!サンキューおじさん!」

「今いないから今度会ったときにでもお礼言いなよ?」

まだまだ子供だねぇ〜。と呟きながら思い出したように付け加える。

「OK!」

「それと、選んであげたのは私」

「サンキュー! ちょうど俺好みだよ!」

「良かった〜。ちなみに、私のと色違いだよ♪」

そう言って亜耶姉が近くにあったカバンから携帯を取り出す。
なるほど、亜耶姉のは白で俺のは黒な。

「そうそう、私の番号登録しといたからデートにでも誘ってね」

「ハイハイ」

「何故棒読みなの?私はこんなに愛しているというのに!」

「お〜ジューリエット。僕も君を愛しているさ!しかしこれは運命なのだ。いくら僕らが愛し合おうとも神は認めてはくれないのだよ!」

「ロミオ!あ〜何故あなたはロミオなの?」

「はい!ここまで!」

ってか、なんでシェイクスピアなんだ?

「え〜、私のセリフ短くない? まあ、いいわ。地図も書けたことだし、次に会うのは学校かしらね?」

「そうだな。じゃ、そのときはよろしく」

帰りに余っていたアイスを2つもらって(俺が買ったんだけどな)亜耶姉の家を出る。

「うわ〜綺麗に染まってるじゃんか!」

夕焼けで真っ赤になった通りを亜耶姉の書いてくれた地図をたよりに歩いていった。
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