●● 猫=神様 --- こいつら…できるっ!!! ●●
「んぅっ。走ったねぇ〜」
ここまでの道のりを某ゾンビゲームの大岩シーンさながらに全力疾走してきたためか、なんとか時間に間に合い、2人同時に教室に入った。
…アレ?
「先輩。ここ1−B」
「えっ?私2年生だよ〜。何言ってるのぉ〜。って、ぁあっ!」
くるりと身をひるがえしまたもや全力疾走する先輩。
なんていうか…お疲れ様。
え?真志?何それ。って、ん?
「でな。かなりレベル高くて…」
「また新しいクラブができそうな予感だな…」
「T・Jのトップたちでさえここにくるまでの情報が手に入れられないって話だ…」
「謎に包まれた少女かぁ…俺、FC入会の準備しとくわ」
クラス中が何かの話題で染まったらしく、妙にざわついている。
まぁ、普段も騒がしいって言えば騒がしいけど、今日はいつもと違い、男どもの熱気がやけに高まってるっていうか…。
不思議に思いながらもとりあえず荷物を置くために自分の席に着く。
まさか、転校生が来ちゃうとかじゃないよなぁ〜。ははっ。
ほら、先生も1人で入ってきたしさ。
「あ〜、もうみんな知ってると思うが今日やってきた転校生を紹介する」
って、おい
「だがなぁ〜。どうも遅刻らしくてなぁ〜」
何故か先生がドアにそっぽを向く。
転校生が大嫌いなのか、はたまたそれ以上に気になる何かが空にあったのか…。
ちなみに空には梅雨に入る前の眩しい太陽と、さわったらきっとふわふわしてる雲がいくつか、それと人影。…………っ人影!!?――――――バァッリィーン!!
って、おぉい!
突然、窓が何者かによって内側に吹き飛ばされる。
飛び散るガラスの破片の中に居たその『何者か』は長く綺麗な髪を後ろになびかせ、先ほどのダイナミックな登場を無視するかのように少し広がったスカートのふくらみを気にしながら、ゆったりと両足で教卓横に着地する。
「初っ端から遅刻はよくないな〜。どうした。道にでも迷ったか?」
「えぅっ。そのぉ。すいません」
担任が出席簿にチェックを入れると同時に、少女が顔をあげ―――
「うぉぉぉおおおっしゃぁあああ!!」
――とたんに歓声と共に男いや…漢どもが立ちあがり、後ろの方の席に座っている俺の視界あった彼女の姿が隠される。
さすがは山内学園の生徒。毎年大型FCの抗争でどこかの校舎が爆発したり、テロに襲撃されたりしてるせいで感覚がマヒしているのかさっきの大惨事をものともしない。
ちなみに俺はなんとか正常を保ってるごく少ない生徒のひとりだ。
ってか、空から飛んできたって…2年だったか3年だったかに国際レベルでも通用しそうな女の先輩いたな。また変な科学者っ子でも来たか?
に、してもこんな時期に転校なんて珍しいな―――って、もしや今度こそ超能力者!?
やめてくれよ。余計ややこしくなるじゃないか。
…って、あれ?なんか最近似たようなこと考えなかったか?
「ご趣味はっ!?」
「特技とかありますか?」
「坊主とかどう思いますかっ!!」
そして突如始まる転校生質問コーナー。
はぁ。こういう空気は苦手だ…。あまり大人数でドーンと突き進むのは好きじゃない。
担任は担任で黒板に転校生の名前でも書いているのか黒板の上をチョークが滑って行く音が聞こえる。
そういえば…と窓際の方に目をやると誰も血すらでずに傷一つないかわりに、机の上に置かれたノート類に深々とギラギラした欠片が突き刺さっていた。
こいつら…できるっ!!!
「うっ…うぅ」
隣の席のメガn――じゃなくて山田 太郎君が全身を震わせて机に突っ伏している。
血が出てないところをみるとどうも精神的にダメージを受けたらしい。
「「「すべては生徒会のためにっ!」」」
いつの間にかワラワラと集まってきた黒装束の生徒会救急行動隊<救急黒服ズ>によって担架で持ち上げられどこかへ連れてかれる山田君。
気付けばさきほどの壁や窓もすでに別の行動隊<修繕黒服ズ>による修復活動が始まっていた。
一体全体どこで待機してたんだ?
「よし、それじゃぁ。丁度席もひとつ空いたところだし今日からあそこの席な〜。それじゃぁみんな仲良くしてやれよ〜。ST終わり」
おい担任っ!
少しは心配しろよっ!
そんなことを思っている間にも教室の後ろ側の扉から山田君が出て行ってしまう。
ここは俺だけでもお別れのことばを…。
「2日ぶりだねっ!隆史ぃ!寂しかったでしょっ!」
――え〜と…あれ?山田君ってどんな顔してたっけな?
「お〜い、隆史ぃ〜っ!」
あぁ、別の意味で泣けてきた。ごめんよ山田君。
「うぁんっ!無視するなぁ!」
ん?いつの間にやら教室が静まり返ってるような…。
それになんかさっきから後ろですんごい馴染みのある声と共に誰かが俺の背中をパシパシ叩いてる気がする…。
だが、その更に後ろから伝わってくる真志のもつソレと似たオーラ群でわかる!
ここで振り返ったら間違いなくいろいろと終わるっ!!
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