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● 猫=神様 --- 変態仮面オミヤー ●

『少し遅くなると思うから先に寝ておれ!』

去り際にイナリちゃんが言った言葉をなんとなく思い出す。
『少し』というのは使う人によって多少なりとも差はあると思うけど結局、あの3人は朝になっても…次の日も、2日経っても帰って来なかった。
一体全体何処で何をしてるのやら…。
まぁ、世界主もついてることだし危ない目にはあってないとは思うんだけど…。
一応、朝食は作って冷蔵庫の中にしまってあるものの…本当にいつ帰ってくるんだろ?

「ピンポーン!」

おっと、もうこんな時間か。
表に軽く返事し、洗っていたひとり分の皿を水切り台に置いてから着なれた学生服の袖に手を通す。

「よおっす」

「なんだぁ〜その気の抜けた声はぁ〜っ。とりゃぁ〜」

先輩にトコンと背中を叩かれる。
というか、先輩の方が抜けてると思うのは間違いなく完璧に絶対に明白に明らかに俺だけじゃない。
と、そんな俺と先輩を隣で見ていた真志が一瞬目を輝かせて一歩踏み出す。

「鹿島先輩。よお〜っす」

「うん。真志君おはよ〜」


……………。


…………………。


「も、もうひと押しっ!」

しばらくの沈黙の後、真志が先輩に向かって手を合わせる。
あぁ。うん、お前の言いたいことはだいたいわかった。

「え?何?何!?私が何!?どれが何っ!?」

軽くテンパリ状態の先輩がこちらを見るのでしかたなく、

「さっき、俺にやったみたいにして欲しいんじゃない?」

耳元に手を当て小声で囁く……が、それがいけなかったのか、ふにゃぁんと地面に膝をつけて座り込んでしまう。

フヴァア――

うぉっ!真志が発火しやがった。
…この前から光希に軽々飛ばされているものの、元々運動神経がいいのと、小さい頃から習っているというわけのわからない拳法を習得している真志にかかれば俺がお空をキリモミ回転しながら落ちていくのも時間の問題だ。

「……もぉ。ターくぅん。それはだめぇ〜」

普段聞かないような声を出し、顔を赤らめながら、立たせてくれとこっちに手を伸ばす。
ただ、まだ力が入らないのかふるふると震える手は俺がつかむ前に降りてしまう。
なんとか俺のズボンを掴み、潤んだ瞳でこちらを見上げた。

ヤバいッ!これは危険ゲージMAXポイントっ!

恐る恐る、真志に目をやると驚いたことにいたって冷静。
かけてもいないメガネをクイッと上げるマネをしながら、

「隆史君。まず彼女を部屋の中へ連れて行け。そしてやわらかくスプリングベッドに寝かせるんだ。掛け布団は毛布だけで構わない。後は彼女を世間の縛りから解き放てばいいのだ。ときに、セーラー服というのは人によって好みがあるが―――」

出たな変態仮面オミヤーっ!!!

――説明しよう!
大宮真志は目の前や脳内で{自主規制}や<{自主規制}、またそのような前触れが起こった場合。自分の中にで大きくなりすぎてしまった変態オーラに飲み込まれ、変態仮面オミヤーとなって恐ろしいくらいに冷静に物事を{自主規制}な方向へと進めてしまうのだっ。―――

っていうのを今決めた。
というか、親友の俺でもこの状態の真志を見るのは久しぶり―――え〜と、この前見たのは確か去年の夏旅行だから1年はもう経ってるってことか。

「さてさて、隆史君、真志君、鹿島さんにお知らせですよ〜ん」

「あ、は〜い」

「?」

「だが、最近では靴下まで脱がすという底辺にも満たない行為が―――」

若干寝むそうな声の千葉さんが軽く目をこすりながら登場すると、熱弁を振るう真志ただ一人を除いてそちらに顔を向ける。
そういえば、毎度のことながら何をやっていたのかはわからないけど、管理人室にはこの2日間ほど『開けたらメッ!』の板が下げてあった。…もしかして寝てない?

「これな〜んだ」

その手にはなんか妙にゴッツイ壁時計が…………うん?


≪8:10≫


STは8時30分からだから…って!!

「走れぇ〜っ!!!」
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