●● 猫=神様 --- コンチクショウメ ●●
夕日も傾きかけた頃。
朱に染まる道を着物姿の女の子と二人並んで歩く。
…まったく、どんなシチュエーションだよ。
「礼をいわせてもらうぞ。今日この町には来たばかりでまだ、慣れておらんのじゃ」
「へぇ、引越しねぇ」
こんな時期に引越しなんて珍しいな。
ガチホモ超能力者だったりしたらお断りだぞ?余計わけがわからなくなる
「…そ、そのようなものじゃな。長い間ほったらかされていたのじゃが、突然こっちに飛ばされたんじゃよ」
「え〜と、お父さんの仕事か何かかな?」
「……ハハ…ハハハ」
…へ?
何?その冷えた笑いは。突っ込んだらダメみたいじゃないか
「それにしても学校のこととか大変だったでしょ?って、イナリちゃんって中学生じゃない…のかな?」
「むぅ…そうじゃった。そ、それにしてもどうしてイナリの名を?」
「いや、今も自分で言ってるし…って、『ちゃん』付けじゃおかしいよね。ゴメンゴメン」
あんまり年下の子と話してないからなぁ。
話し方がどうもギコチナイ。
「むぅ、それは気にしなくとも良いが…記憶操作は必要ないようだの」
「へ?何か言った?」
「む、むぅ?気のせいじゃないかの?」
おっと!?これはアレか?
この前真志に借りたゲームでもあった『恥ずかしいこと小声で言っちゃったよぉ』的なイベント?
うわぉ…って、さすがにありえないよなぁ。
っていうか、これじゃぁ俺、真志と同レベルじゃん。
「到着じゃ。ご苦労だったな隆史とやら」
名前は…教えてないからたぶん俺と真志のやりとり聞いてたんだな。
っていうか…
「え〜と、君もここに住むの?」
「むぅ?『君も』とは隆史もここの住人なのか?…ということは『ご近所さん』じゃの〜。これからもよろしく頼むぞ」
【TIBA's HOUSE】
嬉しそうに言う彼女の上にあった金属板が夕日に照らされ黄金色に輝いて見えた。
偶然だよ…ね?
っていうかここに住むってことは山内学園?
しかもひとり暮らし…ヤバイ。これは非常にヤバイ。
「イナリちゃん!」
「むぅ?」
「夜はしっかり鍵かけること!下着類は外に干さないこと!それから変な人がいたら容赦なくフライパンなりハンマーなりで殴り倒していいからね?」
「…む、むぅ了解じゃ」
「よしよし。それだけ守れば君にも青春がやってくるからね」
う〜ん、なんか前にも同じことを先輩が引っ越してきたときに言ったような気がする。
「それじゃぁ、俺は2階だから。何かあったら声かけてよ」
「おぉ、奇遇じゃの。イナリも上の階じゃ」
…って、アレ?2階の部屋は開いてるにはあいてるけど千葉さんの物置になってるはずだよな…
…ヤバイ、嫌ぁな予感がする。
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「え〜と、イナリ…ちゃん?」
「むぅ?何かの?」
「その〜…ここに…住むんだよね?」
「そうじゃよ?これから世話になるな。守護者殿」
…ハハッ…ハハハ…やっぱり。
「ちなみにイナリは『同じアパート』の頃からうっすら気付いていたぞ」
はぁ〜〜、またややこしくなるのか?コンチクショウメ。
っていうか、無い胸張るな。イナリちゃん。
「まぁ、後々イナリのことは話すとして。とりあえず上がろうではないか」
「え〜と。じゃぁ、おじゃましま〜す」
「うむ。靴は適当に置いてくれればよいぞ」
アレ?…ここって俺の家だよね?
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