戻る | 次へ | 目次

● 猫=神様 --- 出たなオジャマ虫めぇ! ●


「むぅ〜。重いのじゃ」

近場で『すーぱーこんびにえんすまーけっとすとあ ちばちば』とかいう店を見つけたまでは良かったんじゃが…ちとばかり買いすぎたかの?
むぅ、手が赤くなっておる。

それにしても『イナリが来たから宴会でもしよ〜!』と言い出したのは姉様ではなかったかの?
何故に主役であったはずのイナリが買出しになんぞ出向かねばならんのじゃ。酒なら自分で調達すればよかろうに…。

むぅ。そういえばまだ光希の守護のお方にもあいさつしてないのぉ。
光希の話だと今はまだ学校にいっていて、もうすぐ帰ってくるそうじゃ。
この辺りの高校といったらあの『娘』も通っておる渦原か山内のどっちかじゃろう。
どっちにしろあの光希殿が選んだ者なのだからきっと素晴らしいお方じゃな。

「……ぅぉぉぉおおおお!!」

むぅ?向こうから…人かの?

「女だ!メスだ!しかも和服美人な幼女だぁ!ィヤッフー!!」

…なんじゃ?今日は祭かの?
この者…制服からして山内学園の高等部の生徒じゃな。
まぁ、光希の守護のお方ではないじゃろう。
光希殿の話だと守護のお方はあんまり騒がないお人らしいからの。
それにしてもこのイナリに対して幼女とは失礼な。一度噛み付いてやろうか。

「いやぁ〜、まさか居残り終わっての帰りにこんなキャワイイ子と巡り合えるだなんてぇ〜♪やっぱり俺ってラッキーボーイ?」

…むぅ、意味不明じゃ。

「おっと、俺の名前は真志。君は?」

「…あ、え、い、イナリじゃ。そ、それにしても…何かイナリに用かの?」

もう、さっきもらった袋のせいで腕がジンジンきておるのじゃ。
用がないのなら今すぐにでも帰りたいのじゃが…。

「…ィイ!!いいよ君ぃ!!その言葉遣いには萌えを感じるよ!!萌えをっ!!」

『萌え』とな?…でることかの?
むぅ、少しでも威厳を出すために使ってるだけなのじゃが…
そ、それは多少嬉しいとは感じるがイナリはまだトウカ姉様のように急ぐ必要もないのでな。


□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□



「おっ、電灯点いた」

これって設定時間過ぎると点くんだっけ?それとも暗くなると点くんだっけ?

「って、もうこんな時間!?」

驚いて左腕につけた時計を確認する。
くぅ、かなり遅いじゃん。
千葉さんのコンビニ寄ったときになんだかんだいって自分で欲しいものも買っちゃったからなぁ。
いつもならもう家にいてラジオ聞きながら夕飯のしたくしてるのに…。

ん?あれは真志と………誰あの子!?
まだまだ小さいけど将来期待できるな……っじゃ、なくて!何故この時期に着物だよ?
そいつは危険だよ?脅威だよ?物騒だよ?Dangerだよ?あ、ついでに道の真ん中は危ないよ?

「あ、これ俺の番号ね〜。いやいやいやいやそこをなんとか受け取ってくれ☆」

やっぱり、ナンパか〜。真志もこりないな。
しかも今回は着物美人(しかも子供)…確か前みたときは新任の先生だっけ?あのときは大森先生に見つかってチョーク投げ食らってたけど…。

「すまぬな。御主のような騒がしい者は苦手じゃ」

うぁ、結構ストレートだねぇ。

「大丈夫、大丈夫。『苦手苦手も好きのうち』っていうじゃんか」

言わねぇよ。
ってか、しつこい男は嫌われるぞ?真志。

「そ、そのぉ……むぅ」

まったく。こっちは急いでるってのに…

「真志。そこらへんにしとけよ〜?」

あまりの真志のしつこさにたまりかね。真志の肩に手を置く。
真志のナンパ暴走列車を止めるのが俺の指名みたいなもんだ。

「うっ!出たなオジャマ虫めぇ!」

振り向きざまに俺の顔に指を突きつける。
まったく。お前はいつからUFO乗り回すバイキンになった?

「その子、困ってるだろ?遠目でも真志が無理やり引き止めてるのがわかったぞ?」

「ちっちっち。隆史君。女心をわかってないねぇ。彼女は困ってるんじゃない。俺との運命の出会いに心ときめかせると共に恥ずかしがっているのだ!」

馬鹿だ。コイツ正真正銘の馬鹿だ。
……まぁ、いつものことか。

「そうだ。これを機会にお前に俺の素晴らしさを改めて痛感させてやろう!そうだなぁ。まずはなんといってもこの容姿だな!道を行けば誰もが振り返りそのあまりの美しさに眩暈めまいを…」

…はじまりやがった。
こいつがこんな風に話し出すと止まらない。もう、周りも見えないくらいに喋りまくる。

「今のうちに行こうか?」

路上で身ぶり手振り恍惚とした表情で語る真志をぽけーと見ていた女の子に小声でそう言ってから彼女の持っていた2つのビニール袋をその小さな手から預かる。って、これ千葉さんとこのじゃないか。

「むぅ?」

不思議そうな顔をしてるけどまぁ、しかたがない。

「まぁ、アレだな。長年の付き合いってやつでこいつのことはよく知ってるんだよ。え〜と…簡単にいえば逃げるなら今がチャンス」

「そうではない。これはイナリの役目じゃ」

痺れているのか少し震える指先で俺の手にぶら下がる袋を指差す。

「あぁ、あんなやつだけど一応親友が迷惑かけて遅くなっちゃったみたいだから責任持って送っていこうかなぁって。もう暗いし、女の子ひとりじゃ危ないから…って、おせっかいかな?」

「むぅ。助かるのぉ。正直、腕がちぎれそうでの…こっちじゃ」

ホントは早く家に帰って夕飯作りたいんだけど…まぁ、光希たちにはもう少し待ってもらうとするかな。
戻る | 次へ | 目次
Copyright (c) 2007 Gentle impostor All rights reserved.
 

-Powered by HTML DWARF-

inserted by FC2 system