●● 猫=神様 --- 女神様!? ●●
「ゼェゼェ…ゼェ」
ふぅ、それにしても久しぶりに全速力で走ったな…。
上がってしまった息を沈めながらも自分の部屋のドアを開けて、
ガッチャ
「おかえりなさ〜い♪」
「………。」
バタン
閉める。
今、部屋の中に誰かいたよな?
「部屋間違えたか?」
ドアの横に掛かっている表札を見る。
【桜木 隆史】
あってる。
じゃ、じゃあ見間違いだな!今日、俺疲れてたし!
「ほら、なんで閉めたの!早く入って!」
……俺の現実逃避終了。
俺の部屋からでてきた『彼女』によって俺は何もいえないまま部屋に引きづり込まれる。
「まったく!いきなり閉められたからビックリしたじゃない!」
「あ、え〜と……誰?」
「あ、そっか私見てもわかんないよねぇ。じゃあ」
そう言うと『彼女』は「クル〜リ♪」とか言いながら、かかとで回転。
「え!?」
さっきまで『彼女』がいた場所に俺が拾ってきた猫がチョコンと座っていた。
俺が驚いているのを見て猫がニヤッとしながら(そう見えた)後ろ脚で立ち上がり器用にバック転する。
すると、また『彼女』が小さく笑いながら目の前に…。
「…え〜と?」
「私の名前は手島 光希。よろしくね!」
「俺は桜木 隆史。こちらこそ…じゃ、なくて!さっきのは何?」
身長は小さめで髪型は短く、歳は俺よりは下に見える。
顔は…童顔っていうのか?『キレイ』っていうよりも『かわいい』感じがする。
まあ、とにかく誰が見ても『美少女』なんだろうな。
光希と名乗ったその子は少し笑った後、
「『変化』だね〜。私、神だからいろいろ変身できるの〜♪」
うわぁ。さらりとすげぇこと言われた。
っていうか神ってよくマンガとかで見ると、頭にワッカつけたじいさんだよな?
…全然ちがう。
「別に猫以外にもなれるけどね〜。私猫好きだから〜♪あ、隆史は猫好き〜?」
…無理やり自分のペースに引き込もうとしてるし。
「…で、その神様がこの平凡高校生の俺になんかようなんですか?」
「うん!実は、隆史君に頼みがあるので〜す!」
エッヘンとなぜか腰に手をやる。
なにがしたいんだこの子は…
う〜ん、それにしても頼みねぇ……ん?『世界中の捨て猫をすべて救出するのだ!』とかだったらどうする?んな無茶なっ!
「大丈夫。だいいちそんなこと無理でしょ!ここで暮らさせて?」
「なんだ、そんなことか…って何!?」
神様といえどあんた女じゃないのか?
それなのに今日初めて会ったばかりの男子高校生の部屋に泊まるのか?
っていうか心読まれてるし。
「いいじゃん♪」
「よくねぇ!」
「…だって降りてきたの初めてなんだし…いいもん!ここに泊めてくれないなら野宿だもん!」
そう言って出て行こうとするのをつかまえる。
っていうか野宿!?
この時期さすがに寒くはないだろうが…神が野宿ねぇ。ゴミ捨て場からダンボール拾ってきて近くのレストランのゴミ箱あさって…なんか想像するだけで泣けてきた。
「一晩だけだからね」
「じゃあ、泊めてくれるの?」
「しょうがないだろ…野宿して風邪でもひいたら俺のせいになるし」
ん?神って風邪ひくのか?
自分で言っておきながら気付く…まぁ、いいや。
「ありがと〜♪フフ〜ン♪」
そう言ったかと思うと光希は部屋をスキップする…って何歳だよ。
「隆史と同じ16歳ぃ〜」
…とてもそうは見えん。
っていうか神の歳って人に換算するとどれ位なんだろう?
……って、アレ?なんで俺の名前も歳も知ってるんだ?
「人間と同じだよん♪隆史の歳は調べた!」
そう言う光希の指差す方を見ると、俺の学生カバン…くぅ、見事に物色されてる。
「寿命も同じくら〜い。あ、でも世界主っていう一番偉い人が地球と同じ歳だよ?」
ほうほう、豆知識ゲットだぜぇ。
「え〜と…その『せかいぬし』さんだけ?それ以外は?え〜と…キルストさんとか」
正直、キルストさんくらいしか神様知らん。
あ、もちろん目の前にいるのは別としてだけど。
「ああ、あの人の場合は『ガハハ!』ってノリだけで復活して生き返ったから別だって世界主さんが言ってた」
『ガハハ!』って…もっと神聖で神々しい感じじゃなかったのか?
しかも、ノリで生き返ったって…どうすればそうなるんだよ。
「あの人、神力は強いんだけどお酒と女の人を手放せないような野蛮人だったんだってさ。十字架にしばりつけられてたときもスッゴイこと叫んでたみたいだし…」
信じれん。っていうかショックだわぁ。
ま、別に信者じゃないけどさ。
「そういえば、ご飯まだ〜?」
「『そういえば』ってなんだよ! それに飯はさっき食わせたと思うんだけど?」
たしか、猫のときに食わせたよな。
「『読心術』はエネルギーを使うからお腹空くんだよ!」
「ならやるな!それに、俺のプライバシーを考えろ!」
「へいへい、わかったからさ。ご〜は〜ん〜」
こいつ絶対わかってねぇ。
「っていうか走り回るのやめろって!ここアパートだ!」
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