●● 猫=神様 --- 捨て猫 ●●
◇猫=神様◇
by. Gentle impostor
「今日は遅くなっちまったな〜」
「柊木先輩の話長かったもんな」
俺の名前は桜木 隆史。山内学園の高校一年生だ。
ちなみに、今は友達の真志と一緒に下校中。
時刻は空が黄金色になり、日も落ちかけるころ。
といっても男ふたりだけだからロマンのカケラもありゃしない。
「にゃ〜、にゃ〜」
ん?猫…か?やけに弱弱しい声が聞こえる。
たぶん、どっかの捨て猫か何かが腹でも空かせてるんだろうな。
「にゃ〜…にゃ〜」
「……ったく、もう!」
世の紳士淑女たちよ。これを無視できるはずがあろうか?…いや、できん。
「にゃ〜」
俺の思ってることを知ってか知らずか猫の声があたりに悲しく響く。
どうやら俺たちが渡ってきた橋の近くにいるらしい。
「そんなん、ほかっとこうぜ」
真志の声を後で感じながらも橋の下に入ってみる……いた!
湿って汚れたダンボールの中から小さな猫が力の感じられない目でこちらをみつめている。
「お〜い」
「こっちおいで」
「ニャンニャン」
思いつくままに話し掛けたり手招きしたり草で誘ったりしているとフラフラと危ない足どりで猫が近寄ってきた。
「怖くないからな〜」
そう言いながら触るだけで壊れてしまいそうな猫を慎重に抱きかかえ、なんだかんだ言いながらも待ってくれていた真志に近寄る。
「で、そいつどうすんだ?」
「家に連れてく」
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「にゃぅ♪」
俺が作った猫飯をめっちゃ嬉しそうに食べる猫…うん、かわいい。
この部屋に運んできたときにはかなり弱ってたけど飯を食わせたら元気になった。
ちなみに今こいつが食べてるのは3杯目。よほど腹が空いていたらしい。
「そうだ、お前体洗うか?」
腹がすごく減ってるぽかったから飯を優先させたんだけど、風呂にでもいれない限り汚いままだしな。
「よっこらせっと」
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ブウィィ――――
洗面所にあったドライヤーで猫の濡れている毛並みを乾かす。
ときたま犬みたいにブルブルッと水滴が飛び散らせて俺の制服に飛び散る。
まぁ、猫が気持ちよさそうなので良しとする。
今まで汚れててわからなかったけど猫は綺麗な銀と白の混ざったような毛色をしていた。
猫の種類とかあまり詳しくないけど、買ったりしたら高い種類なんだろうな。
「あ、今日の夕飯のおかず買ってないじゃん」
猫に気を取られてまったく考えてなかった。
ひとまずリビングにでも猫おいてスーパー行こうかな。
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近所のスーパーからの帰り道。
目の前を1組の男女のカップルが通り過ぎていく。
「……ふぅ」
その幸せそうな顔を見て思わずため息がこぼれる。
う〜ん、俺も顔は悪くないと思うんだけどなぁ。
性格も歪んでるわけじゃないし……。
おっと、ナルシシストじゃないぞ?
「あ〜〜彼女欲しい!」
ひとり虚しく空に叫んでみる。
「オーケー オーケー それなら 安心 大丈夫!近いうちに良い子と巡り合えるって!」
「そうそう、人生はポジティブでなくっちゃ!」
「ねぇねぇ、猫ちゃんはどうするの?」
「う〜〜〜〜〜ん?」
家に連れて来たは良いけど、これからのことなんかぜんぜん考えてなかった。
「誰か引き取ってくれる人いないかな?」
考えてみよっと…
「自分で飼おうよ!ご飯は食べ残しでなんとかなるし!」
「そうだな!うん、そうしよう!」
「さすがは守護者君♪」
「………って」
俺は誰と喋ってるんだ?
慌てて声のしていた後を振り返る…誰もいない?
確かにさっきまで誰か女の人の声が聞こえたような気がしたんだけど…
ま、まさかついに俺も妄想壁が!?
それとも幽霊さんが?…
「うあぁ〜〜〜!!!!」
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